1.虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)

急性心筋梗塞などの緊急性を要する疾患に対応できるよう、当科では24時間体制でカテ-テル検査・治療を行える環境を整え、経験豊富な循環器専門医による質の高い治療が可能です。また、大動脈バルーンパンピング(IABP)や経皮的心肺補助装置(PCPS)などの心臓補助装置も熟練した臨床工学士のサポートにより安全で正確な管理が可能です。

心筋梗塞とは心臓を栄養する血管(冠動脈)が完全に詰まり、心臓の筋肉(心筋)が壊死するため放置すると命に関わる怖い病気です。急性心筋梗塞では、冠動脈が完全閉塞してから可能な限り早期に再開通させることで、心筋が生き残る可能性をあげる必要があります。よって一刻も早く診断・治療をする必要があります。
狭心症とは冠動脈が動脈硬化や血管のけいれんなどで細くなり、冠動脈の血流が悪くなるため、胸部症状を起こしたり心筋の障害を来たしたりします。 具体的には、胸が痛い、息苦しい、胸が圧迫される、締め付けられるなどの症状が出現します。

以上のような疾患の疑いのある患者さんには、冠動脈造影(カテーテル検査)を行い、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術など最善の治療を選択して行います。最近では手の親指の上で脈を触知可能な遠位橈骨動脈からの冠動脈造影検査を行っており、患者さんにとってより低侵襲な検査ができるようになっております。透析患者のように橈骨動脈からの穿刺が困難な患者にはより良い検査法となります。また、 狭心症の診断にはカテーテル検査だけでなく、トレッドミル運動負荷心電図などの運動負荷テストや心筋シンチグラフィー、冠動脈CTなど、体に負担の少なく、外来でも施行可能な検査も充実しています。重症度や緊急性が低いと判断される患者さんには、これら侵襲性の少ない検査を優先し、より負担の少ない診断を目指しています。

冠動脈CTはCTを心臓の動きに合わせて撮影し冠動脈の状態を形態的に診断することが可能です。さらに、包括的心臓CTでは心臓の筋肉に十分な血液が流れているかを評価することもできるため、治療に直結する検査といえます。

カテーテル治療は狭くなったり詰まってしまっている冠動脈にワイヤーを通し、専用の風船で拡げたり、ステントと呼ばれる金属性の筒状の網を留置する治療法で、心筋梗塞や狭心症の標準的治療法になっています。カテーテル治療には治療した血管が再び狭くなる再狭窄が起こりえますが、現在は薬物溶出ステントが使用されるようになり、再治療を要する確率は著明に低下しています。また、高度石灰化病変に対してはロータブレーターやダイヤモンドバックという石灰化を削る器具も使用できるようになっておりますのでカテーテル治療の成功率や治療後の再狭窄率も低下しているものと考えられます。