前立腺がん

1.前立腺がんとは

前立腺は、男性にしかない臓器です。膀胱の下に存在し、精液を作っている臓器です。前立腺の中を尿道が貫いています。
前立腺癌予測罹患者数は、2015年時点で男性癌の第1位となっています。男性癌部位別死亡数は第6位で、早期発見と適切な治療が重要です。

2. 症状

基本的には無症状です。病気が進行すると、前立腺肥大症のような症状を伴う場合もあります。転移を有する場合、これに伴う症状(骨痛、体重減少など)が出現することがあります。

3.診断

PSA測定

前立腺癌は特異的な腫瘍マーカーが存在し、「PSA」というものです。健診で確認することもできます。

前立腺MRI

PSAが高く、前立腺癌の疑いがある場合に撮影します。必要に応じて、造影剤を用いたMRI撮影を行う場合があります。

前立腺生検

肛門から超音波のプローベを挿入し、直腸側から前立腺に針を刺して組織を採取します。これを病理検査(顕微鏡で細胞を確認する検査)へ提出し、癌の有無を確認します。














 

4.病期(ステージ)

T1:事前の検査で所見がなかったもの

 T1a/b:前立腺肥大症の手術時に偶発的に発見されたもの

 T1c :前立腺生検で発見されたもの

 

T2:事前の検査で所見があり、前立腺に限局するもの

 T2a :前立腺の左右どちらかの1/2を超えるもの

 T2b :左右どちらかの1/2を超えるもの

 T2c :左右両方に及ぶもの

 

T3:前立腺の被膜を超えるもの

 T3a :前立腺被膜の外に浸潤するもの

 T3b :精嚢(前立腺の裏にある精液を貯める袋)に及ぶ

 

T4:隣接する臓器に浸潤するもの

5.治療

1)手術治療(ロボット支援下前立腺摘出術)

ロボット手術は、開腹手術や腹腔鏡手術と比較して傷が小さく繊細な手術が可能となります。「ロボットの手術」ではありますが、実際には医師が操作し手術を進めていきます。
生検で確認した前立腺癌の悪性度などに応じて、リンパ節郭清(骨盤の中のリンパ節を摘出すること)を行います。入院期間は、約1~2週間となります。

2)放射線治療

基本的に、内分泌療法と併用して治療を進めていきます。一定期間ホルモン治療を行った後に、放射線照射を行います。近年はIMRT(強度変調放射線治療)を用いて治療することが多く、照射は他院へ依頼して行います。
内照射治療は、当院では施行していませんので、三重大学医学部附属病院などへ紹介します。

3)監視療法

前立腺生検で、検出した癌の悪性度が低く、少量しか検出されなかったときに選択されます。特に治療介入は行わずに、定期的にPSAを確認し、可能であれば定期的な前立腺生検を行います。PSA値が上昇したり、再度の生検で悪性度が上昇している場合は治療介入を行います。

4)薬物療法(内分泌療法・化学療法)

放射線治療の前後や転移を伴う前立腺癌だった場合に選択されます。前立腺癌は男性ホルモンに反応して増殖するため、男性ホルモンを抑制する治療です。
注射薬や内服薬を用いて治療を行います(内科的去勢)。
男性ホルモンは睾丸や内臓から分泌されるため、睾丸を摘出することで薬物治療に代えることも可能です(外科的去勢)。

 

内分泌療法に反応しなくなった場合、去勢抵抗性前立腺癌という状態となります。内服薬を変更したり、抗癌剤の治療を選択して治療をすすめます。